2012.05.01
うつ病について――( その1 )
最近立て続けにうつ病の患者さんが来院され、何年も薬を服用しているが、どんどん悪くなってきて、色々な他の症状が出てきており、このままでは病気が治らないように思え、何とかしてほしい、という事でした。 近年、ハッピードラッグと呼ばれるパキシルなどの、ニューロ・トランスミッターの関与する部位に働く薬により、うつ病が改善していると言われています。 しかしながら、上記のような患者さんたちが出現してきているのも、事実としてあり、漢方を使っている我々も、このうつ病を正面からとらえて論じる必要があると考え、この文章を書くことにしました。
うつ病について書かれた文献を調べていて気が付くのは、精神の状態や、気持ちの状態を、身体の因果関係でとらえず、すべて脳神経に、その異常に、帰そうとしています。たとえば、疲れやすさ、睡眠障害、食欲不振などの内臓や免疫、臓器機能に関係することまで、一義的に脳から起るとしている点です。すべて脳が原因なのでしょうか?この考え方は、漢方の教えからも誤っていると私には思えます。
頭痛や腰痛などの症状は、とくによく見られるものですます。重く締めつけられるような頭の痛みはうつ病の人に特徴的といわれ、教科書的には鉢をかぶったような重さだと表現されることがあります。このほかにも、肩こりや体の節々の痛み、食欲不振や胃の痛み、下痢や便秘などの胃腸症状、発汗、息苦しさなど、さまざまな症状が現れてきます。
こうした身体症状が存在すると、私たちはつい身体のことを心配するために精神的な面を見逃してしまいがちです。身体症状のために、憂うつな気分が目立たなくなるのです。こうした状態は、抑うつ症状が身体症状の仮面に隠れているという意味で「仮面うつ病」と呼ばれることがあります。
- コメント(2)
- 21:51
1.投稿:○ake○a A○○の母│2013.06.09 23:55
橋岡先生、お世話になっております。
受験生で腹痛が、慢性化しており、
通院させて頂いております。下痢の症状は、改善傾向では御座いますが、本人は、試験になると息ができなくなってパニック状態になるようです。
本人は、真面目で勉強熱心だったがゆえに、現在の状況が受け入れられない様子で、うつ状態に入ったかとも感じています。
眠れない状態になっているようです。
橋岡先生に現状をお話しして、処方をお願いすればと言っておりますが、本人は、心療内科を希望しています。
どうでしょうか、心療内科を受診した方がよろしいでしょうか?
親としては、先生のところで見て頂くのが良いかと思っております。
一度、私(母)先生と面談させていただいた方がよろしいでしょうか?
其れとも、心療内科を探した方がよろしいでしょうか?
どうか、ご指示を宜しくお願いいたします。
2.投稿:橋岡│2013.08.14 21:51
忙しかったことと、システム上の欠陥のため、ご返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。システムは改善しましたので、これからは、迅速に、対応できると思います。
さて、お子さんの件ですが、典型的な心身症で、体の不調が、精神にまで影響を与えるようになった様態と見受けます。これに対しては、2つの方向からの治療が必要です。一つは、肉体の問題であり、もう一つは、精神のコントロールの問題です。体の問題は、お話を伺う限りでは、普通の内科や、心療内科の受診では治らず、漢方治療が必要と考えます。漢方の教えるところでは、長引く腹痛・下痢は陰病になっている、という事だと思います。これに伴い、精神も落ち込むようになったのと、推定します。試験になり、息ができず、パニックになることについては、昔から武道の修行でいうところの、臍下丹田に力を込めるといわれていることなどの訓練や、座禅などで、精神統一する訓練などが、有効でしょう。
そのように考えますと、お子さんのケースは、体の不調と、精神の不調という二つの側面があり、このどちらが先かというのが見えなくなってしまい、困っているという事と、考えます。これに対して、私は、体の問題が先だと考えます。しかしながら、このからだの不調を、現代医学は正しくとらえることに、失敗しています。現在のところでは、漢方だけが、正しくとらえて、直すことができるようです。