医学トピックス

2019.04.29

パーキンソン病は、治療できる?!予防できる?!

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 小太郎漢方のh.31.4月号に掲載された文章を、公開します。パーキンソン病の病気の本体が明らかになり、治療法として漢方薬の服用すれば、進行を止めることができるということが分かってきました。そればかりでなく、原因物質のαーシヌクレインが、リビー小体認知症も引き起こすことから、このリビー小体認知症も治療するのではないかと、期待されます。

先日、京大のiPS細胞研究所が、重症のパーキンソン病の患者さんに、他人の細胞から作ったiPS細胞を、神経細胞の前駆体に誘導して、その細胞を患者さんの脳に手術で移植して治療する、という計画を発表しました。

 この治療は、パーキンソン病が、脳の黒質のドーパミンを産生する神経細胞が次々に死滅して、ドーパミンが作られなくなる病気であることから、重症のパーキンソン病に対する画期的根本治療になると期待されています。

 さてここでパーキンソン病に立ち返ると、なぜ、どのようにして、脳の黒質のドーパミン産生細胞が死滅するのかが、分かっていません。

これに対して、JIJI.comの、111日づけの記事によると、パーキンソン病が腸から始まるという、驚くべき報告がなされたことを、報じています。(*1)

米国とスエーデンの学者たちの報告では、米国とスエーデンの患者データーベースの調査で、虫垂切除者は非切除者より、パーキンソン病の発症率が19%も低いことが判明したというものです。

 この報告は、パーキンソン病の原因の主要たんぱくである「αシヌクレイン」が虫垂にたまると推定されており、この物質が不明のルートにより脳に運ばれて、黒質のドーパミン産生神経細胞を破壊するのではないかと、いうものです。

 この話を知って、長年の私の疑問が解けました。

 私が今の診療所を開設して約30年近くなりますが、初めから診療所の治療に漢方を使っていて、パーキンソン病の患者さんへの漢方薬の随証治療で、パーキンソン病そのものが、進行しないのみならず、軽くなっていくという現象に、気が付いていました。しかし、パーキンソン病が原因不明という理由で、漢方治療がなぜ有効なのか、また、虫垂炎(オケツ)とのどのような関係があるのか、わかりませんでした。 症例―1、症例―2 を参考

 さらに、30年近く患者さんを漢方治療していて、当院では一例もパーキンソン病を発症された方はいない、ということも大事な点だと思います。

 

 それゆえ、今回の報告と、私の知見から、はっきりとパーキンソン病は、漢方でいうところの「オケツ」が原因であり、その漢方治療がパーキンソン病の進行を防ぎ、軽くするといえそうです。また、未病としての「オケツ」を治療することは、すなわちパーキンソン病を予防しているのだと言えそうです。これはまさに「未病を治療する」という漢方の理念にかなうものです。

 これは、素晴らしい仮説だと思われます。このことを証明するには、大規模な研究が必要でしょう。

 

(症例―1)

H.5年より当院で治療していました。患者さんは、60代後半の156cm65kgの小太りの女性で、ゼイゼイと喘鳴が聞こえるぐらいでした。他院で喘息の治療を受けていましたが、風邪をひいたり腰が痛くなったりして、ステロイド治療からの離脱を兼ねてH.8年より当院の漢方治療を、開始しました。

 喘息や高血圧といったものは、一進一退でしたが、経過中に、足が体についてゆけず、つんのめるという訴えより、パーキンソン病もあると疑い、Finger to Nose Test を行いましたところ、陽性でした。パーキンソン病の治療を提案しましたが、L-Dopa は拒否され、漢方だけで様子を見ることになりました。その後、H.13年、H.14年と、パーキンソン病の増悪は見られず、むしろ少し軽くなった印象がありました。H.22でも、憎悪は見られていません。

 

 

(症例―2

 尋常性乾癬で、これまでに漢方治療を不定期に受けていた、35歳の男性です。腹痛を訴えて受診し、McBurney の圧痛点を認め、虫垂炎の診断で、コタロー大黄牡丹皮湯 6gr 抗生物質、消炎鎮痛剤、胃薬、整腸剤を4日分処方し、外科受診の紹介状を持たせました。外科では、虫垂炎という診断で手術を勧められましたが、様子を見たいとその日は帰宅し、薬を服用し続けました。2日後外科受診するも、圧痛点も消失し、外科のDrも不思議がっていたとのことです。

 

 

(*1)The vermiform appendix impacts the risk of developing Parkinson’s disease

Science Translational Medicine 2018 Oct 31 ; 10 (465)

 著者は、Viviane Labrie (Van Andel Research Institute)

 

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