東西医学の融合

2013.09.04

因果律についてー高血圧を例にー

01-03-12 ボナール・静物・1937◆古いボードに油彩-1_R.jpg

医学の世界の話に、なぜこのような難しい哲学の問題を取り上げる必要があるのか?と、疑問に思われる方がおられるかもしれません。その理由は、“正しい治療”が行われていると考えられている医学の世界で、実はその場限りの「対処療法」が行われているという事により、この問題を考えなければならなくなっているのです。
この問題は、保険制度と絡み複雑な内容となっています。何故か?お医者さんが行う治療が対処療法であることを、説明していない、否、説明しょうとしないからです。どうしてかといえば、それは、保険診療では、詳しく説明し続ければ、とても時間がかかり、採算が取れなくなるからです。その爲、お医者さんが行う治療は、「“そこそこ”の治療」を目指すという事になります。患者さんから苦情を言われず、患者さんの苦痛を取り、“そこそこ”の効果をあげ、効率よく患者さんを処理してゆかねば、保険制度の下では医者は経済的に成り立たないというのが、事実としてあるからです。
例えば、「高血圧」という病気を取り上げてみましょう。この病気は、現在判明していることは、①遺伝性疾患である。②原因は、多くの因子がかかわっている。-例えば肥満、或いは、過剰な食塩摂取、或いはストレス、など数多くあります-。③現在、高血圧の治療は、血圧にかかわる三つの要素-循環血液量、血管抵抗、心臓の収縮力-を変える物質を薬として用いており、高血圧の原因を、取り除こうとしているのではない。等のことが挙げられます。
このため、高血圧でお医者さんにかかっている患者さんたちは、お医者さんにかかればお金がかかるなどの理由で、勝手に誤った理屈をつけて、受診をやめようとするようです。
その中でも一番誤った考えは、高血圧は、薬で血圧が下がったから、治ったというものです。上の説明からも、この考えが過ちであることがお分かりいただけるものと思います。また、血圧が高いことを指摘して、お薬を飲むことを勧めますと、一度高血圧の薬を飲むと、ずうーっと飲み続けなければならないから、飲みたくない、とおっしゃる人がいます。この考えも、間違っていることが、上の説明でお分かりいただけると思います。
時々出くわす悲喜劇の一つは、高血圧を治療して、肥満を指摘され、痩せたらよくなると言われ、それで体重を20kgほど落として、薬をやめてしまう人がでてくることです。そして、しばらくして激しい血圧(上が180くらい、下が120ぐらい)を指摘され、当惑されるという訳です。ヤセれば高血圧が治ると考えるのは、過ちである事は、上の説明でお分かり頂けたと思います。
このような悲喜劇が出現する理由は、医者も患者もともに、高血圧の治療が、あくまで対処療法であるという事を、理解していないためです。これが、因果律と呼ばれる、哲学上の問題を考えなければならない理由なのです。高血圧の患者さんは、血圧を下げるだけでなく、高血圧から解放してくれることを、お医者さんに望むでしょうが、それは、かなわぬ願いなのです。何故か?高血圧の原因が不明で、分らないことを望まれても、それはできないと、拒絶されるだけです。

以上が、高血圧を巡る因果律と呼ばれる問題です。医学上には、同様の問題が沢山あることも、ご理解いただけるでしょうか?

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