東西医学の融合

2012.04.15

"こむら返り"のお話 (1)

 

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 “こむら返り”は、日常生活でよく出会う、病気と言わないまでも、激しい痛みをもたらす“難儀な”物の一つです。この問題を少し掘り下げて考えてみましょう。
 まず、その発生原因について。
 こむら返りでよく知られている事は、真夏に田舎の川で泳いでいて、こむら返りが起こり、水におぼれて死んだとかいうことが、新聞などで報じられることがあるという事です。なぜ、河で泳いでいてこむら返りが起こるのでしょうか?
 現在のところその原因については、河で水の温度が異なる場所があり、――河の深みには、温度の低い水が流れているところがあるのは、本当です――そこに足が入って、足の筋肉が冷やされて、こむら返りが発生するというものです。同じようなことが、夜寝ていて、突然足が痛くなって(しばしば、足のふくらはぎに起こります)目覚めるときに、起こっているようです。つまり、寝ていて足が熱くなって、足を布団の外に放り出して、ために足が冷えて、こむら返りが起こるという訳です。この2つの状況は、非常に似ており、発生原因を考える上では参考になります。
 ひるがえって、現代医学、生理学ではどう説明をしているかと言えば、こむら返りの本体は、筋肉細胞の内外に“イオンのバランスの崩れ”が生じることが、痛みの原因であると答えています。
 しかしながら、足などが冷えることと、イオンバランスとの間は、どう論理が繋がっているのか、あまりすっきりとは理解できません。まあこのことは少し脇において、お話を進めましょう。
 次に、こむら返りの病態はどのようなものか?という事を考えてみましょう。
 こむら返りが起こっている、ふくらはぎを触ってみれば、その筋肉が固く攣縮を起こして、小さくなっているのが分ります。この筋肉の“攣縮”が、こむら返りの痛みの原因です。現代生物学の教えるところでは、筋肉にある“テンション・リセプター”(筋肉の収縮の程度に応じて、知覚神経に信号を送るセンサーのこと)が、攣縮に伴って、持続的に大きな信号を知覚神経に送り、これを、激しい痛みとして我々の脳が認識する、という訳です。
 こむら返りの痛みは、従って筋肉を温め、マッサージをして、固くなっている筋肉を柔らかくほぐしてやればよいことを、我々は経験的に知っていますから、この固くなった筋肉をほぐすために、足のおやゆびを曲げたり、固くなったふくらはぎをさすったりします。漢方を少しご存知の方は、この時に「芍薬甘草湯」を服用すれば、あら不思議、5分も経たないうちに、たちまち痛みが治まり、筋肉もほぐれて柔らかくなるのを経験されたことがあると思います。
現代医学、薬理学の教えるところは、芍薬と甘草が筋肉細胞の内外のイオンのアンバランスを是正し、筋肉をほぐすのだということです。治療法はこれでよいでしょう。
 問題は、なぜこのような筋肉の攣縮が、筋肉の生理で発生するのかを、説明できるかにあります。
 それは、筋肉が果たす役割が、実は2つあり、一つは収縮と弛緩という事により体を動かす運動の元になることであり、もう一つは、収縮と弛緩に伴って発生する“熱”の熱源になっているという事です。
 この“熱”を発生させるという事そのものが、こむら返りの“真”の原因であるという事が、次の説明でお分かりいただけると思います。つまり、寝ていて足が熱くなり、布団の外に足を出して足を冷まそうとして、逆に足が冷えすぎて温度が下がり、布団の外に出ているふくらはぎが、熱を生産するために収縮して、それが過度になってこむら返りとなるという訳です。
  同じことで、冬に寒い教室などで“貧乏震い”をするのは、同じ理由によるということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。
冷えると筋肉が過度に攣縮して、痙攣を発生し、爲に痛みを起こすという事が、この“こむら返り”の核心部分であることがご理解いただけたと思います。
 次の問題は、寝ていて、どうして足が熱くなるのか?という事になります。この問題を考える上で最も参考になる考えは、それは我々人類が、恒温動物であるという事なのです。原理的に考えて説明をしてゆくためには、ここまで遡らなければなりませんから、この続きは次回にします。
 

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