病気の解説

2012年06月20日

うつ病について――( その2 )

 -うつ病と慢性疲労症候群の関係-
 うつ病と慢性疲労症候群について、うつ病――(その1)、では、同じ病気を、精神・神経の面から捉えた病態がうつ病で、身体の側面で捉えた病態が慢性疲労症候群だと考えていると述べました。仮面うつ病と呼ばれている病態が慢性疲労症候群に相当するのではないか、という訳です。
 しかしながら、この2つの病気の間には、同一疾患の異なった側面を捉えたものと、断定するには、まだ早いように思えます。
 その理由は、2つあります。
 一つは、この2つの疾患と呼ばれている患者さんを見ますと、うつ病と診断されている患者群は、①眼がどんよりしていて、精気が無く、患者さんが言うには、②文章を読んでも、頭に入らないと言います。③理由もなく気持ち・精神が落ち込んで、④何もやる気がなくなってしまうとのことです。一方、慢性疲労症候群の患者さんの精神状態は、そこまで落ち込んでいないようです。
 という事は、うつ病の患者さんたちは、もう一段、慢性疲労症候群から進んだ病態である、と言えそうです。これの別の解釈としては、うつ病の①から④までの、例えば、眼がどんよりしていて精気が無い、という症状は、抗うつ薬の症状であるから、うつ病の薬を飲まなくなれば、この症状は、消えてなくなるものだとするものです。どちらの考えでも、この精神の異常状態が、うつ病の患者さんたちと、慢性疲労症候群の患者さんたちを、分けていると考えており、それが2つの病気の違いであるとしています。
 さらにもう一つの違う点は、「続発性うつ病」(注)の患者さんたちを見ていますと、原発性の元の病気から回復すると、うつ病まで回復しているという事があります。だから続発性と称するわけです。この続発性うつ病は、慢性疲労症候群の診断基準には、すんなりとは当てはまらず、しばしば「慢性疲労症候群??」と、クエスチョンが付きます。
 この2点の違いを考えると、うつ病と、慢性疲労症候群という2つの疾患が、同一疾患の、違った側面を見ているという考えは、少し違和感を感じさせます。
 以上のことから、うつ病と、慢性疲労症候群の関係を考えると、これらはどうも、入り組んだ複雑な層構造をなしているようです。もっとたくさんの患者さん達の観察をしなければ、この層構造の内容は、これ以上は、はっきりしたことが言えませんので、何年かしてまたこの続きを書くこととしましょう。
(注)続発性うつ病
  幾つかの慢性疾患の中で、その病気の経過中に、うつ病が発生する事が知られており、このうつ病は、続発性うつ病と言われています。よく知られている事例として、C型慢性肝炎や、結核があります。
C型慢性肝炎の場合、その治療でインターフェロンを使用している時にうつ病を発症して、患者さんが自殺することがあり、時々報道されることがあります。その他にも、結核があります。

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