病気の解説

2011年06月30日

病気の正しい治し方について-その2

 前回では、病気の症状が取れても余邪が残っているので、これを取り除く必要があり、故人はこれを「病気の養生」と捉えていたことを、お話ししました。次の問題は、疾病概念にかかわることですが、「ごまかしの治療」と筆者が考えている治療法についてのお話です。
 具体的に分り易くする為に、「アトピー性皮膚炎」を挙げてみます。この病気は、全身の皮膚が赤くただれて痒くなるため、夜も寝ることができず、そのため小さな子供さんなどでは発育障害を起こしてしまうほど酷くなることがあります。
 この病気について、現在までに解明されていることは、ほとんどの場合は、原因となるのは①ハウスダストと言われている家のホコリ②このホコリの主要成分は家に巣くうダニの死骸である、という事がわかっています。これに感作されて、病人の体の中に [IgE] と呼ばれる特殊な免疫グロブリンが作られます。次に、皮膚の表面で、原因物質であるこのダニの死骸と、この [IgE] という免疫グロブリンが抗原-抗体反応という特異的な反応を起こして結合して、抗原-抗体複合体を作ります。次にこの複合体が皮膚のマスト細胞に結合すると、このマスト細胞から様々な生理活性物質が放出されて、炎症が激しくなり、痒みもひどくなります。このアレルギーの一連のプロセスは化学反応ですから、リセプターに拮抗する化学物質を薬として使えば、この反応を抑えることができます。このような治療が、現代医学でなされる治療法と言えます。例えばマスト細胞から放出される痒み物質であるヒスタミンが、痒みを起こさないように抑え込むものとして、抗ヒスタミン剤が開発されました。これを使えば確かに痒みはなくなりますが、この治療は痒みに対しての一時押さえでしかありません。時間がたてば、この抗ヒスタミン剤は体の中から排泄され、薬の効果が無くなればまた痒くなります。この抗ヒスタミン剤はまた眠気を催しますので、この薬を花粉症の患者さんが服用して、自動車事故を起こして社会的に問題となっていますので、ご存知の方もおられるでしょう。
 私が主張したいのは、アトピーなどで痒みが無くなったからと言って、アレルギーが治ったなんて考えないでいただきたいという事と、そのような治療で良しとしないでいただきたい、という事です。なぜ、アレルギー反応が起こるようになってしまったのか?これからこの痒みを起こすアレルギー反応を起こさせないようにするにはどうすればよいのでしょうか? 家のホコリやダニを、完全に取り去ることができるのでしょうか? いえいえ、そんなことは不可能です。実験室のような無菌室の中でクリーンな生活をすることは、免疫力を弱めるだけでなく、現実的ではありません。かといって、高性能の掃除機でホコリを吸い取ればそれでよいのでしょうか?Noです! ホコリなんてまたいくらでも出てきます!
とすれば体の中にできたダニと反応する [IgE] を、取り去ればよいということになります。しかしこんな事は可能なのでしょうか?現代医学が教えるのは、現在の段階では不可能という事です。
しかしながら、漢方治療すれば、この事は完全とは言えませんが相当程度可能で、RAST score と呼ばれるダニに対する IgE の値を、大きく下げることが可能です! つまり、このような漢方治療こそ根本治療と言えるのです。場合によれば、完全に消失します。当院の患者さんで、犬アレルギーの、IgE score がゼロになり、犬アレルギーが消失した例があることを経験しています。
 要約しますと、何故だか分りませんが、家のホコリやダニに反応してアトピー性皮膚炎を患った。検査としては、ダニに対する IgE score が高い。ここで、ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン剤を使ってもアレルギー反応を消失させるのではないから、薬が切れてくると、また痒くなる。これの繰り返しを、患者さんたちがやっているわけです。それ故、アレルギーの原因となる体内物質である IgE を減らす治療をすれば、アレルギーは起こらなくなるというわけです。つまり、これぞ「正しい治療法」という事になります。このことが可能なのは、漢方治療だけと断言できます。こんな話は聞いたことがないと言われるかもしれませんが、当然です。私以外の漢方をやっているお医者さんは、こんなことに興味を持っていないので、全然一般の人たちには伝わっていません。しかし、面白いとは、思いません?自分で言うのはなんですが、私は「すごい!素晴らしい治療法だ!」と思っています。
 次回には、ステロイド剤や、免疫抑制剤が「正しくない治療法」と考えていることや、減感作療法と呼ばれる治療法の問題点などを述べてみましょう。

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