黄帝内経

2011年01月29日

人の寿命を決めているのは何か?-その2

 前回に、寿命を決めているのは、「細胞の機能不全」であることを述べました。機能不全は、そのシステムが劣化することにより起こりますが、では、どこが悪くなっているのでしょうか?実は、エネルギーの産生する器官であるミトコンドリアが、年齢とともにエネルギー産生効率が低下してきているのが証明されています。それがこの図です。横軸にサンプルを採ってきた人の年齢をとり、縦軸にミトコンドリアのエネルギー産生効率をCOX活性で代表して表してあります。年齢とともに、COX活性が低下しているのがわかります。さらにこのCOX活性が百二十歳ぐらいで0になることもわかります。つまり、エネルギーの産生ができず生きてゆくことができません。ここでも、人の最大寿命が百二十歳であることが分かります。
今回の結論は、老化は、「細胞の機能不全」によるものであり、この機能不全は「ミトコンドリアのエネルギー産生効率の低下」によるものであるということが分かったわけです。
もちろん、ミトコンドリアのエネルギー産生効率の低下以外にも、有害な活性酸素を処理する能力の低下など、老化に伴う機能不全が起こってきますが、これらは、やはりATPという、ミトコンドリアで生産される細胞のエネルギーの元になっている物の、産生能力の低下により引き起こされているようです。考えてみれば、我々の生活も電気やガソリンなどのエネルギーが十分なければ、うまく回らないのと同じであると、分ります。ですから、「細胞の機能不全」は、「ミトコンドリアのエネルギー産生効率の低下である」と結論しても良いでしょう。
  次の問題は、ではなぜ、ミトコンドリアのエネルギー産生効率が、年齢とともに減少するのか?そのメカニズムは何か?ということになります。このデータを示した本では(ミトコンドリア・ミステリー:林著;講談社新書)年齢とともに蓄積されるミトコンドリアを作る蛋白の設計図であるDNAに蓄積される突然変異にあるということを、細胞工学を利用した実験で推定しています。しかしながら本当にDNAの突然変異の蓄積と、ミトコンドリアのエネルギー産生効率が、アンチ・パラレルかどうかは、実験で示さなければ証明できない、と考えます。
 次回は、この辺を、もう少し詳しく述べましょう。

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